ウエストナイルウイルスについて 1

環境機器株式会社 
技術コンサルタント 菅野格朗 

 近年、様々な感染症が問題となってきている。古くから人類と感染症との戦いは続いているが、最近はその様相も変化してきた。例えば、克服したと考えられていた病気が猛威を振るったり、今まで感染者の前例がない場所で特定の感染症が蔓延したりといったようにである。これらの事例は様々な要因によって引き起こされていると考えられるが、次の2つの事項が大きな要因と考えていいだろう。1つは、発達した人類の交通網(輸送網)に便乗して、感染症を媒介する生物(Vector−ベクター−)が様々な国にたどり着く事から広がるという要因。全てのVectorが感染症を引き起こすウイルスを持っているわけではないが、仮にウイルスを体内に保有したVectorが他地域に侵入した場合、条件が合致すれば感染症が広がる可能性があるというわけである。もう1つは、Vectorが薬剤抵抗性を獲得した為に、Vectorが爆発的に増え、駆除出来ない事から感染症の広がりも抑えられないといった要因である。現在、問題となっているウエストナイルウイルス(以下WNVと略称)が北米へ侵入した方法は前者の要因に起因するのではないかと考えられている。後者の事例としては日本脳炎を媒介するコガタイエカや、マラリアでもハマダラカが挙げられるだろう(宮城,2002)。
 では、現在問題となっているWNVとはどういったものなのか?PCOとの関わりはあるのかといった事を述べる。
【ウエストナイルウイルスとは?】
 まず、実際にWNVとはどのようなウイルスなのか?WNVはフラビウイルス属に属するウイルスで、高熱・頭痛等の症状を伴うウエストナイル熱を引き起こす。重篤化するとウエストナイル脳炎となり、死亡率が3〜15%と高まる。WNVは自然界において、右図のように鳥→蚊→鳥(1部は蚊-雌成虫-→卵→蚊成虫)というサイクルで媒介される(安居院,2003)。人間や馬などは終宿主であり、吸血性蚊類の吸血によって感染する。人から人への感染は無いとされるが、輸血によって感染した可能性が指摘される例は知られる。我が国では本感染症は第4類感染症に指定されている。
 本ウイルスのように吸血性カ類によって媒介される感染症としては、日本脳炎ウイルス・黄熱ウイルス・デング熱ウイルス・マラリアなどが挙げられる。

図1 WNV感染経路

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